2015/06/16

片付いてしまった

散らかすという行為は問題の本質から目をそらすための人間の防衛本能です。

といきなり人間として駄目だしされるところから始まる、こんまりさんの片付け本。

こんまりさんこと近藤真理恵さんのことは、最近まで知る機会がなかったのですが、もっと早く出会いたかったです。「片付け」という単語ににじみ出る「めんどくさくてやりたくないけどやらなければいけない」という後ろ向きなイメージが完全に払拭され、「片付けはほかでもない、自分のためにやるのである」と1000%前向きに取り組めるようになる本です。

Kindleポイントが半額還元されるときに「人生がときめく片付けの魔法1」と「2」を揃って購入して、あらゆるところにバーチャルなマーカーを引きまくって、むさぼり読んだあとには
「かたづけ!!!しなきゃ!!!!」と鼻息荒く洋服をひっぱりだしていました。

片付けはもともとめちゃくちゃ苦手で、引き出しの中にごちゃごちゃに放り込んでどこに何があるかわからないとか、家に帰ってきたら上着をとりあえずいすにひっかけたままにしておくとか
ベッドに投げ出しておくとか、それがどんどんたまっていくとか。。というのをこれまで生きてきてずーっと繰り返していたのです。が。

こんまりさんの本に忠実に従って片付けをしてみたら、洋服を出しっ放しにすることがなくなりました。そのうえ毎日鞄からすべてのものを取り出すなんていう、きれい好き上級者みたいなこともできるように。
こんまりさんは言います。血液型や性格によって片付けられない人がいる、なんてことはありえない。片付けはマインドが9割だと。本当にそうだったようです。今ではテーブルにものがおいてあるとすぐ気になってしまうようになりました。ミラクル。

捨てるものを決めるのではなく、残すものを選ぶという発想によって「いやなもの」のことを考えるいよりも「好きなもの」のことをより多く考えられるようになるので、自然と片付けそのものが楽しくなる。

そして「片付け」そのものが目的なのではなくて、片付いたきれいな部屋、お気に入りのものに囲まれた空間で幸せな時間を過ごせるための手段として片付けを位置づけているのがとても良いです。
特徴的なのは、こんまりさんが「もの」や「おうち」を人間とおなじくらい大切にしていること。
ものに話しかけ、家に話しかけるその姿に「オカルトっぽい…」と引く人もいるようですが、私はこれめちゃくちゃ大事だと思います。そこにあるものや家じたいを大切にすることは、「場」そのものを大事にすることにつながって、場所の力みたいなものが発揮されるはずだからです。

最近、精神科医の名越康文先生の著作もむさぼり読んでるのですが、先生も「場の力」のすごさを語っていて、良い場も悪い場も、人に与える影響はおおきいのだと。自分の居場所がどこにもないと思っているのなら、居場所を探すのではなくて、今いる場を自分の居場所となるように自ら育てていくべきなのだと。

居場所があるって、つまるところ自分が安心できるところであって、自分が安心できるというのは、何か起こったときに自己治癒力にもなれるというわけであって、何かしら疲れることだらけの毎日をなるべく楽しく楽しく暮らすためには、必須なんですよね。

ということを思っていたら、文筆家の千野帽子さんもそういうようなことをツイッターでつぶやいていまして
自分に鈍感な男、自分に敏感な女 「不機嫌」についての考察
著名人が皆似たようなことを別々のアプローチで見つけているのが不思議だし、いろんなことが一気にリンクして楽しいです。

話ずれまくりましたが、片付けはただものを減らしてすっきりするだけじゃなくて、「もの」と、ひいては「場」ときちんと向き合う行為だということです。そして自分の身近なものにきちんと向き合えば向き合うほど、自分がどんどん楽になっていくと。

断捨離や片付けにかんする本はやまほどあって、きっとどの本も突き詰めていけばみんなおなじ境地にたどり着けるとおもうのですが、そのしくみみたいなものをきちんと言語化できているのがこんまりさんの本の魅力で、だからこそ世界中に翻訳されているのだろうなあと思いました。

「片付けを終えた人は人生がドラマチックに変わる」らしいですが、そんなことばにひがんでみせるのではなくて、素直にそうなりたいなあと思えました。


たくさん思うところはあって、こうしてまとめてみると書き切れない要素がぽろぽろこぼれていったけどまあいいか。