2015/10/19

ビバ!私はメキシコの転校生 「幸福」をおしえてくれた自由学校 - 山崎まどか

映画・海外ドラマ・ファッション・文学・音楽などアメリカのヤングカルチャーを中心にいろんなジャンルのセンスのいいものを紹介してくれるライターさん。ミスiDの審査員もなさってます。
私的には「師匠の師匠」みたいなかんじのひとでして、図書館で検索してみたら幻のデビュー作がおいてあったので借りて読んでみたのです。
まどかさんが小学校低学年のときに移住したメキシコでの学校生活と日本に帰ってきてからの生活を書いたもの。書いたのはなんと15歳のときです。

メキシコというと先住民族の文化のイメージがつよく、モダンなおしゃれとは結びつきにくいかんじがします。でもまどかさんは幼いながらもメキシコの国旗の色鮮やかさや、「ピニャタ」というクリスマスのときにつくるおかしをつめた紙の工作へのこだわり、そして終業式のダンスパーティーで踊った際に着た民族衣装の細かい描写など、「きれいなもの」「センスのよいもの」を見極める力が養われていました。

さらにまどかさんが通っていたトラウィカ学園は、普通の学校ではなくて少人数制の自由学校。何よりもまずさきに毎日おやつをかばんに入れて持って行くという描写があって笑ったのですが、カリキュラムがなくって自分の好きな勉強を好きなだけやったり、遊びを通して生きることを覚えていくスタイルで、とにかく楽しくてしかたない!という気持ちが伝わりました。
残念ながら学校は財政難で閉鎖したようなのですが…そうよね…難しいのよねえ。
その中でこどもたちは<提案する> <批判する> <ほめる>を主に学んでいきます。どれも日本の教室で素直にやろうとすると難しいものばかり。とくに<批判する>は目的がうまく達成されずに悪口合戦になろうとします。
でもまどかさんは
<批判する>ということは、いじわるをいうことではけしてなくて、相手と自分がちがうと思うことをはっきり述べることです。だからそれは、自分とほかの人のあいだにあるちがいをかんがえながら、前以上によく理解しあい、なかよくなれるということです。信じあう心がとてもつよくなります。
と正しいやりかたできちんと学んでいる。私はまだこれが怖いです。目的はそうであるとわかっていても考え方に異論をとなえられると自分自身に異論があるのかと思ってしまって萎縮しちゃう。ほんとうの<批判>をとおしてわかり合えた、という成功体験を実感していないからでしょうなあ。

そこから2年ほどたってまどかさんは日本に帰国するのですが、帰国子女が学校になじめないというのはよくある話で、まどかさんもトラウィカ学園流ですごそうとしてさっそく違和感だらけになります。
学級の<反省会>という話し合いでも<批判>というより<他人の悪口のいいあい>になるという、おきまりのパターンからはじまります。メキシコにいたときのノリで発言しようものなら「ふざけている」といわれ、今まで持っていた価値観と真逆の環境で窮屈になっていく様子が…こういうの読むたび辛いです
同級生からのいじめはおろか上級生からリンチを受ける始末。
それでもまどかさんは彼女らを憎むことはせずに、「みんな抑圧された社会で悲鳴をあげている」のだと主張します。自分が受けた痛みだけに気をとられずに、相手の中にある気持ちをくみとろうとしているまどかさんの様子がとてもとてもまっすぐで強くて、すごいなあと思いました。
そうやって普通の子供より何倍も濃い毎日を過ごしてきたことをしって、今ご自分の好きなことについて書きまくれているまどかさんがいてよかったなと。

そして、私自身学校があんまり楽しめなかったので、あの場がもっと過ごしやすくなれるようになればなあと強く思います。ふぅ。

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