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2015/11/12

かわいい、辛い、かわいい

悪童日記 [DVD]
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アルバトロス (2015-03-04)
売り上げランキング: 6,704
ベストセラーにもなり、ファンが多い原作の映画化。本を読みたいなと思いつつも「ぜったい辛いやつや…」と踏み込めずにいたので、映画から観てみました。

辛いやつやった…

愛に包まれて育った双子が、戦争を機に田舎の祖母宅に疎開させられるお話。父からもらったノートに日記をかき、母との約束で勉強だけは続けながら、過酷な毎日を生き延びる双子が、残酷さに打ち勝つために「訓練」と称してお互いを傷つけ合ったり、自分たちで残酷なことをしてみたり…と救いが見えない映画です。戦争の混乱で正義なんてとうになくなっていて、周りの大人たちも醜さをさらけ出していて。

自分の弱い部分をひたすら殺していくことでしか耐えきれない日常の、なんとも冷たくて厳しいことか……。双子と同じく一瞬も気をゆるめることができません。友達ができたり、親切にしてもらうことがあっても、その人たちだって簡単に殺されてしまう。

教会で働くお姉さん意地悪でしたねー。おそらくナチス支持者だったのかな。あんな風に連れて行かれるユダヤ人の行列をおもしろげに眺める人々も実際にいたのでしょうね。その残酷な光景の中で彼女が食べてるパンがめっちゃおいしそうなのがまたね。そしてお姉さんめちゃくちゃ美人でもうね……!この映画は「かわいい」と「つらい」の葛藤がすさまじいです。

お母さんとの再会シーンは、お母さんって私が気づけなくて「このひと誰やねん…」て思ってしまった(笑) だってあまりにも双子がそっけないから……訓練を重ねた日々の代償として、親への愛情も失ってしまったのがここで分かるんですが、またお母さんも新しい男がいたりして、人って弱い生き物ね…とため息。

お父さんも訪ねてくれるんですが、もはや他人同士でしかないんですよね。お互い警戒しあっているし。実際に殺されたわけではなくても、つながりがなくなってしまえばその人を失ったにも等しいので、戦争のむごさが浮き彫りになります。お母さんに言われたとおり「勉強」はしてるのに。お父さんにもらったノートに日記だって書き続けているのに、約束だけが残って約束した人物とのつながりが消えるという。

最後の訓練は正直そこまでしなくてもいいじゃないかって思うほどですが、彼らが真の意味で大人になるには必要だったのかもしれません。「お互い離ればなれになるのが一番こたえた」と言うシーンもあるくらい、強く結ばれている二人が別れる痛み。とっても重たいです。


主役の双子さんは監督がハンガリー中を調べ回ってみつけた素人さんだそうですが、この美しさのおかげで映画がぎりぎり耐えきれるかな!って感じだったので、本当に良いキャスティングです。一ミリも人を信用していないあの目つき、素晴らしかった。

あと口の悪すぎるおばあちゃんもコロコロしててかわいかった~!たまに娘や孫を思いやる感情が垣間見えてほっこりしました。撮影の合間に双子となかよくやっていたのかなと思うと萌える…

2014/03/22

映画「あなたを抱きしめる日まで」感想

おじいちゃんおばあちゃんをかわいく撮らせたら英国に敵う国はありますまい。
あーかわいかった。主人公のおばあちゃん役のジュディ・デンチ!

今沖縄では沖縄国際映画祭をやっていて、そのイベントのひとつに桜坂映画大学っていうのがありまして。でゲストに町山智浩さんがくるっていうのを知って、普段映画が見られない体質の私もこれはいかねばと思っていってきました。

イベント内容は映画を上映しながら町山さんとその他芸人たち(雑)がちょこちょこコメントしていくというものでした。それって気が散るだけじゃないかなと思ったのですが町山さんのコメントはどれも映画で伝わりにくい背景をうまく補足してくれるものばかりで、映画の理解度が深まってめちゃくちゃ面白かったのですよ。

というわけでちょうネタバレいきます!

あらすじ:婚前性交を禁じるカトリックを信仰するアイルランドでは、妊娠してしまった未婚の女性を修道院に強制収容し奴隷同然の労働をさせ、子供を金持ちに売るという行為が1995年まで当たり前のように行われていた。主人公のフィロミーナも14歳で出産した息子アンソニーを連れ去られてしまう。50年経ちようやくその事実を娘に伝え、ジャーナリストのマーティン・シクスミスを頼って生き別れた息子を探しにアメリカへ渡る。マイケル・ヘスへと名前がかわっていた息子は既に亡くなっていたのだが、生前の情報を得ようと彼の元恋人を尋ねると、息子もフィロミーナを探すために修道院を訪れていたことが分かり……。


宗教の問題、アイルランドの問題、アメリカの問題、様々な問題が複雑に絡み合って、とても重たい内容の映画。マーティン・シクスミス役のコメディアンさんが脚本もてがけていることもあって、暗い話をコメディをまじえながらつくってあるのがほんとうに効果的でした。フィロミーナは処女を象徴する名前だそうですが、その名前にあうような、神を信じるピュアで無邪気なおばあちゃん、というキャラがとてもとてもかわいいと同時に切なくて、でも強くて、魅力的でした。息子がホワイトハウスで働くエリートだと知った時の「私と一緒にいたらこうなるのは無理ね」みたいな内容のセリフが特に印象的で。そこに連れ去られたことへの恨みとかまったくなくて、お金持ちに育ててもらってここまで頑張ったんだねーみたいな。ほんと無邪気!
あとアイルランド人だからかな、ちょくちょく酒のみっぽい描写があるのもよかったです(笑)

フィロミーナも息子のマイケルもカトリックという宗教にさいごまで翻弄されているのがなんとも苦しい。弁護士としてホワイトハウスでマイケルが働いていたころはレーガン政権だそうで、彼の支持層はカトリック教徒だったため、ゲイを厳しく差別しエイズの薬を認可しなかったそうです。マイケルはカミングアウトをしませんでしたが実はゲイで、死因もエイズ。親の意向で共和党に入ったらしいんですけど、さぞかし辛かったろうなぁ……と涙ぐんでいたら町山さんがこの人についてさらに解説してくれて

ゲイ仲間からは「大統領の近くにいるお前が働きかければエイズの薬が認可されるかもしれないのに、なぜ何もしないのか」と非難され、共和党とゲイの人々との間で板挟みにあって精神的におかしくなっていたそうで、自己嫌悪からハードな性交で血まみれになるほど自分を攻め込んでいたそうです。

ってフィロミーナより壮絶なのでは……。むしろこっちの一生のほうが気になるんだけど……

ふたりとも宗教というよりお金のために、票のために宗教を利用した権力者に振り回されてるだけなのが切ないですよね。今もあまりかわらないのかもしれないけど。

子供を売っていたことが知られるのが怖いのか、修道院もふたりがずっとお互いを探しているのに情報提供を拒んでいたせいで、とうとう会うことが敵わなかった。そのことがマイケルの元恋人のおかげで発覚してシスターたちにゴルァと乗り込むクライマックスも見応えありました。

私は一度も罪を犯していない。犯した者は一生苦しむべき、と過去のことから情報提供しなかったことまでをも宗教をつかって正当化するラスボスシスター(女優さんがサー・アレックス・ファーガソン似)。
そんなシスターに怒り狂う無神論者マーティン。
そこまでされても憎しみを持ちたくないが故に、シスターのすべてをあっさりと赦してしまうフィロミーナ。
いちばん最初に教えに背いた彼女が、いちばん教えに忠実だったということがわかるシーンです。
教えを守り通してきたと自負するシスターに完全勝利の瞬間です。結局、かわいいおばあちゃんが最強なんだよ!ということです。
「俺は怒っているんだ」というマーティンに"must be exhausting"(さぞかし疲れるでしょうね)と言い放つフィロミーナかっこいいです!

それにしても本当にステキなフィロミーナ。息子を奪われ、背負う必要のない罪を背負い続け、自分を責め続け、挙げ句の果てに息子にもう会えないとわかっても、それでも赦しますと口にできる強さ。

息子がゲイっていうのもカトリック的に罪のはずなんですけど「そうだと思ってたわ」ってあっさり受け入れるのもいいですよね。今までは想像するだけだったので、息子に関する情報を得られるだけで嬉しかったからかもしれませんが。会えないとわかっても息子のことが少しでも知りたい、と些細な情報でもかき集めようとするフィロミーナにとって、息子がアイルランドを自分の故郷だと考えていて、自分のことを探してくれていた、さらには自分に見つけてもらうために、息子が修道院に埋葬してもらうよう希望したという事実は、何よりも嬉しいことだったんだろうなと思います。

さすが実話に基づいただけあって、マーティン・シクスミスさんがかいた記事がありました。
Stolen from his mother - and sold to the highest bidder
http://www.dailymail.co.uk/femail/article-1216191/Stolen-mother-sold-highest-bidder.html

映画の内容ぜんぶはいってるじゃないですか……。
しかも修道院はマイケルの墓をつくるときに寄付金要求してたらしいじゃないですか……。
コメントで「カトリックの修道院について良い噂をきいたことないわー」ていうのがあってとてもうなずけます。

そしてマイケルの墓をたずねるフィロミーナの本音がとても苦しいです。
「ようやく戻ってこられたけど、誰も私があなたを探してたこと、あなたを愛してたことを伝えてあげられなかったのね。(私がはやくこのことを打ち明けていたら)もっと違ったことになってたはずだったのに」



レーガン政権のくだりとか、町山さんの解説がないとわからないことばかりだったので
今回ほんとうに面白かったです。すごい良い体験だったなー。

2012/03/11

独自に面白いということの素晴らしさについて

「英国王のスピーチ」をスターチャンネルでみて、「戦火の馬」を劇場で見た。
3月はそのほかに「ヒミズ」もみたので、月に3本も映画をみたことに! 映画が苦手な私にとってはかなり希なことであります。

英国王は第二次世界大戦開始ごろ、で戦火の馬は第一次世界大戦のはなしなのだけど、どちらも英国という点で共通しているのでちょっとつながったりしていますね。

映画の感想をうまくいえる気がしないのでそれはしないんだけど、それぞれの映画で面白かった点がありました。

「英国王のスピーチ」は吃音に悩むヨーク公がスピーチの訓練をうける話で、面白かったのは、英国王になったヨーク公が、これから開戦するにあたって敵対するヒトラーの演説の映像をみて「パパ、なんていってるの?」「わからないがスピーチがうまいな」というやりとりがあった場面。

「戦火の馬」は農家の息子が育てたサラブレッドが戦場でたくましく生き延びる話で、面白かったのは有刺鉄線に絡まって動けない馬を呼び寄せようと、英国軍が指笛なり歯をカチカチ鳴らせたりしているところ。そしてその馬を助けるためドイツ人とイギリス人が力を合わせるところ。

ヒトラーの演説も、戦争のシーンも、いずれも何度も何度も映画で扱われてきたものだけど、英国王の感想や馬を助けるなんてシーンは今までの映画にはなかったものであるはず。よくありきたりな題材を「違う角度から」みてみる、という言い方があるけれど、この二つの映画で面白いなあと思ったところはまさにそういう視点の設定をしたからこそ生まれた「独自のおもしろさ」であるなあということに気づいたのでした。 たぶんこれまで何度も「これは新しい!」というおもしろさを経験していると思うんだけど、ここ最近ようやくそれを「ああこれが『変わった切り口』というやつか」と認識したのです。それだけっちゃそれだけです。この話でしかありえない展開、というのがこんなにも大切なものなんだなあというか。つくったひとが頭の中で考えたユニークさというよりは、その話自体が呼び込んできたおもしろさという感じがしたのです。そして私はそれが大好きです。

私の絵にもでてこないかなそういうの。

というのをふと思ったので書き付けておきます。


ところで軍服とか戦闘機とかが大好きな兄貴から戦争にまつわる武器や軍服のエピソードきいたけど面白かった。日本の銃はメーカーによって弾のサイズがかわったりしてつかいづらかったとか、ドイツ軍は最初にてっぺんがとんがってるヘルメットをかぶっていたので敵にみつかりやすかったとか。

第一次世界大戦では塹壕同士が向かい合って、旧式の戦い方で戦争をしていたので人間ドラマがうまれやすかったんだそうです。「戦争」というと第二次世界大戦のほうが多く描かれることが多いので、第一次についてはあんまり知らなかったんですが、なるほどそれなら馬を助けるため敵同士が歩み寄る、なんてことも実現しそうな雰囲気。最初映画で見たときは「平和すぎやしないか?」と思ったんですが、現実でもクリスマスの時はみんなで祝ったり……したとか。ほんとかな(笑)


あ、あと馬がかわいいってだけで競馬の番組をぽけーっと見たこともある私にとっては馬がかわいそうなシーンはつらかったです!犬ネコは平気だけど馬はあかん。