2010/09/12

ひきうける。

最近好きな大学教授のついったをバカ読みしてます。なにせたくさんつぶやくものだから追いつくので精一杯。んで茂木健一郎さんがご自分のアイコンを「より鮮明でない」ものに変えた記念にフォローしてみたら、就職活動についてやんやいっていました。
茂木さんみたいな有名人が周りに与える影響力の大きさは無視できません。それはtwitterだとより明らかになるようで、彼が勇んで連続postをやろうものなら、すぐに同じ方向を向く人々があらわれます。その教授もそれに呼応するかたちで、就職、はては若者についての考えを連ねています。

というのも、就職難はこれからますます酷くなる一方だという報道が相次いでいるからです。大手の日本企業はもはや日本人ではなく、アジアの「より優秀な」学生を求めています。

その背景にはもちろん「賢くない」日本の学生たちがひしめいているということになります。マーケットの拡大、よりよい人材の確保、どちらも満たすには外国人を採用する方が効率的。その気持ちはわからんでもない。
では我々日本の若者はどうしていったらいいのでしょう。
八方塞がりとも言える状況なだけに、難しいですが一刻も早く解決が求められます。

そんなときにこういう書き方をされるのはすごく心外。
日本の学生の就職「超」氷河期は永久に続く - 藤沢数希

しかし実は第三の理由がある。それはそもそも日本の学生に魅力がないのだ。日本人は大学入試まではかなり勉強するし、実際18歳時点での日本人は諸外国と比べても相当に知的能力が高いと思われる。しかしその後は、ほとんどの日本人は全く知的訓練を受けることなく大学で無為に何年も過ごすことになる。とりわけ文系学部の大学教育は目を覆いたくなるほどひどい状況だ。筆者も日本のいわゆる一流大学の学生を面接することがよくあるのだが、たとえば経済学部の学生に基本的な経済に関する質問をしてみてもほとんどの学生が満足に答えることができない。
(略)
一昔前は一流大学に入学しさえすればそれなりの企業に就職できたし、大学での勉強はあまり重要ではなかった。しかしここ数年の間に出口の部分が大きく変わった。知的能力に乏しい日本の学生に、日本の企業は突然のようにノーを突きつけるようになったのだ。この傾向は今後も変わらないだろうし、アジアの学生との競争はますますはげしくなっていくだろう。また日本の大企業は海外採用を増やし、外国人を上手く組織に組み込むノウハウを蓄積していくだろう。要するに、日本の学生の就職氷河期というのは景気の悪化による一時的なものではなく、今後も恒常的に続いていくものなのだ。日本の学生の就職「超」氷河期は終わらないのだ。

ここに述べられていることは事実です。世間の人も、そして若者自身も「日本の学生はやる気がない」傾向にあると少なからず思っている。
でも。そこで「そもそも日本の学生に魅力がないのだ」と言い放ってしまえるというのは、すごく大変なことだと思うのです。一見ただの事実確認のように思えますが、そこからは深い断絶が読み取れます。「こんな状況だけど、君たちどうするの?」という部外者からの意見のように思える。つまり「俺たちが若い頃より今時の学生は総じてバカ」と言っているようなものです。

なぜそこにモヤモヤしてしまうのか、と思っていたときに、ちょうど読んでいた内田樹の「寝ながら学べる構造主義」で、レヴィ=ストロースの主張に回答を見つけました。

「彼らのうちであれ、私たちのうちであれ、人間性のすべては、人間の取りうるさまざまな歴史的あるいは地理的な存在様態のうちのただ一つのもののうちに集約されていると信じ込むためには、かなりの自己中心性と愚鈍さが必要だろう。私は曇りない目でものを見ているという手前勝手な前提から出発するものは、もはやそこから踏み出すことができない」(『野生の思考』) (寝ながら学べる構造主義 148)

……やっぱり引用だけ抜き出すと分かりづらくなりますね。私が理解したように読み解くと、世界中どこにでも通用する「正しさ」の概念があって、それは全ての人々に等しく通用する、と言うような考え方は、「自分の価値観をごり押ししているに過ぎない」ということです。人々を取り巻く環境は地域によって違うし、時代によっても違います。だからその都度「常識」や「正解」も変わっていく。昔常識だったものが今後ずっと常識である可能性はきわめて低い。
こういう感じでいいのかなレヴィ=ストロース先生?

ということを踏まえますと、今大人が若者の状況を「学生に魅力がないからいけないんだ」ということは、自分たちの若い頃と今の学生を、取り巻く環境を抜きにして天秤にかけている。でも、もしその大人達が今の状況の中で学生をやっていたら? ちゃんと一流大学に入って就活を命がけでやっているのに、日本企業は外国人を優先させる。もし自分は採用されたとしても、周りにうまくいかない友だちがたくさんいる。受け皿は確実に少なくなっている。でも大人は学生のせいにする。それを受け入れられるでしょうか。

繰り返しますが学生の学力が落ちているのは事実です。でも今の状況のように、「みんな一緒に」頭が悪くなっている、というのは明らかに変です。みんなで一斉に怠けることを選択した結果学力が落ちました、という説明では納得できない。社会構造に原因の一部がないと、そういう現象は起きないはず。
こんなときに学生をしかりつけてる場合ではないですよね。
こういう手こずる問題は、特定の年齢層や機関に押しつけても解決できません。

という非常事態に大人にそっぽを向かれては、困るのです。
すみませんけど知恵をかしてほしいな、とみんな思ってる。若い子だって「魅力がない」と言われたくてなってるわけではないです。
こういうことを若者の私がいってもほぼ甘えてるようにしか見えないかもしれないけどね。

残念ながら私は「負け組」にカウントされてよいといえる底辺な身分なので、どうしたらよいかなんて素敵な考えは思いつきません。つきませんけれども。
ようやくこうして就職氷河期という状況を客観的に見つめられるようになったので、これからガンガン考えていきたいと思います。
これまで身近すぎて扱えなかったんだよね(笑)。今も身近すぎることに代わりはないんだけど、なんかもう慣れてきた。

なので、一緒に問題を引き受けてはどうですか、という提案です。
魅力がない、なんて嘆かずに、未来のためにも。

7 件のコメント:

  1. このコメントはブログの管理者によって削除されました。

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  2. すみません!!
    上記のコメント…
    なんだか勢いでえらく私的なことを投稿してしまいました(汗)
    不適切かと思うので、よろしければ削除をお願いします(汗)

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  3. こんばんわ、アルヘン電話マスターさん!(なんかへん)
    私はあまり気にならない投稿だと思いましたが、ご希望通り削除させていただきました。
    でも返信はきっちりといたしますね。

    「今時の若いもんは」という文句は人間が石に文字を刻んでいた時代からあるような伝統的なものなのですよね
    学力低下については本当に諸説あって、捉える方次第でころころ変わりますよね!
    それに今は昔より遊ぶガジェットがものすごい増えてるので
    勉強にばかり目がいかなくなったということもあるだろうし。
    大人のほうも今までのやり方が通用しなくなったことでどうしていいか分からないのかもしれません。育て上げてる場合じゃねえ!だから勝手に頭よくなっててくれ!みたいな感じだったりして。
    つまり若者の問題じゃなくて日本が全体的におろおろしてるのでしょうね
    だから学生のせいにするという暴論で片付けようとしてるのかも。

    なんとか生き延びていたいです!

    レヴィ=ストロースの発言は私もすごく嬉しかったです。
    構造主義のひとたちってだいたい言ってることが難しいのですが、彼だけ例外みたいですね。文明を持たない民族の研究もやってる学者だったからなのかな。
    思いこみって至る所にあって、普段から気をつけてないと無意識にしてしまうものですよね。
    自分を過信しないように見張ってる「もうひとりの私」の意識、大事にしていきたいです。

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  4. アルヘン電話マスターです(笑)
    削除ありがとうございました!!
    お手数かけて申し訳ありません…!


    …やはり見る人によっては不愉快な内容かな、というコメントを書いてしまいまして。ある意味、自分自身も「個人の常識」にとらわれているのではないかと反省しました(汗

    しかも削除コメントなのにレスポンスありがとうございます!!

    「ゆとり世代は頼りない」という世論が一般ではあるかと思いますが…
    最近の大学生や高校生とお話していて、「堅実だし、芯があるし、しっかりしているなぁ」と感じているのは本当です。快楽主義や肉食系の方からみると、表現方に違和感があるのでしょうかね…。

    >育て上げてる場合じゃねえ!だから勝手に頭よくなっててくれ!みたいな感じだったりして。

    これ、かなり真理だと思います!
    本当に理不尽な時代で大変だと思いますが…
    生き延びていきましょう!!
    kanaさんのブログや絵を観させていただきながら…こんな文才・読解力・画力・センスなどなど、自分がこの歳のころはまるでなかったのになぁ、と感じています。

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  5. おお優しいお言葉ありがとうございます…もともと根暗なのですぐ凹む癖があるのですがなんとかはいつくばります!
    私は「状況に流される」能力がたいへん乏しく、自分でいちいち腑に落ちないと次に進めない完璧主義者なのです
    だから「世の中こんなもんなのよ」と普通の人が割り切ってしまえるようなことをいちいち「なんでやねん」とつっこんでる結果がブログにあらわれているのかもです。
    生きるのが下手くそなのですw

    だから褒めてもらえて嬉しいです!
    これからも自分の欠点をいかしてくどくど考え続けます!

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  6. それは欠点では決してない、と思います。
    更に、kanaさんには「理知」「勇気」があるから…人の意見に流されないのでしょうね。
    自らの思考で決断していく生き様は、むしろ素敵だと思いますよ!


    ところで。と、明るい話題に変えますが…
    レオさん大活躍でしたね。スペイン戦に引き続き勝利!
    彼の純朴な笑顔には癒されますね。

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  7. ありがとうございます~

    レオさんすさまじかったすね!CLは微妙な時間にはじまるので起きられないことが多いので困ります…(これも寝てた)
    3:45分て!><
    ハイライトちょう面白かったです。あんなにすばしっこいとディフェンスもどうしたらいいのかわからないんだろうなあ
    ていうか反応できるチームメイトもやっぱ鬼ですね。。

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