2010/09/04

電話恐怖に対する一考察

電話。
それは生活必需品でありながら、持ち主の心をむしばんでいく危険な電化製品。
「電話をかけるのが苦手」というひとは社会人にもたくさんいらっしゃることが確認できると思います。それは見知らぬ人に話しかける能力の有無にはあまり関係が無く、社交的な人でも「電話はちょっと」という人もいたりします。

ネットで検索してみても、「どうしたら緊張せず電話できるでしょうか」という悩みはあとをたちません。だいたいの人に共通する悩みなのです。そこまで大勢の人を悩ませるなんて、電話ったら罪な製品……。

悩みに対する回答で最も多いのは「誰だって初めは緊張するものだから、場数を踏んで慣れるしかない」というもの。慣れてないから怖いんだ、という考えはごもっともです。けど、それで「そんなこと分かってるけどやっぱ怖いです><」と言う人の緊張を和らげることが出来るかな。
そう言い放つよりも、電話という伝達手段にひそむ恐怖がいったい何なのかを探っていくほうが、時間はかかっても腑に落ちると思うのです。完璧に納得できなくても、少しでも恐怖の正体に検討がついたら、「じゃあ場数を踏もうかな」と自然に思えるかも知れない。
でもネットには具体的なアドバイスはあるけれど、恐怖を解明してくれる回答は見つけにくい。

というわけで自分なりに考えてみた。

・電話はアポなしでいきなり相手の時間を奪う

電話というのはライブです。メールのように送っておいていつでも好きなときにお読み下さい、というものではないから、いつ電話がかかってくるか予測不可能。現在のコミュニケーションツールでこんなに「いきなり、かつ無理やり」感があるのは電話しか思いつきません。
取らなければ良いじゃない、といいますが仕事となるとそれは論外だし。
というわけで、こちらから電話をかけるときはかなりの確率で相手の作業を中断させてしまうことになります。そういう意味では最初から不愉快なツールであるわけです。それを使うのだから緊張するのも仕方ないと言えますね。しゅん

・電話は声だけでがんばる不確実な手段

『産業教育機器システム便覧』によると、五官による知覚の割合は視覚器官が83%、聴覚が11%、臭覚3.5%、触覚1.5%、最後の味覚が1.0%、であるとしています。
参考:http://www2s.biglobe.ne.jp/~ganko/kikaku/polytech/1-5.html

電話をつかうとき、五官のうち使えるのは聴覚のみということになります。面と向かって喋るときには99%の知覚をつかって情報を得られるというのに、電話だとたったの11%。ワァオ!(セイン・カミュ風に)
しかも普段は意識してない「声」だけが頼りです。そんなほぼ丸腰状態でつねにライブでコミュニケーションをとらねばならない。喋る内容をメモしていたとしても、それを読み上げたり、相手の答えを聞き取るという行為はすべてアドリブ。こう考えてみると、電話ってそうとう無茶振りに思えてきます。その無茶振りが恐怖だけでなく「電話っておっくう」と思う原因にもなっていそうですね。

何より相手が見えないって人間にとってかなりのストレスです。それだけで一気に8割の情報を受け取れなくなってしまう。電話恐怖の原因はここが大きいのではないかと思うのです。この人が今どういう気分なのかを声だけで読み取るわけですが、11%では完璧に把握するのは不可能ですし、誤解するのも簡単です。ちょっとした軽い冗談でも、ストレートな皮肉として受け取ってしまいぐさっと突き刺さってしまうとか、そういう「あわわわわ」な状況になりやすい、不安定さがつきまといます。
ついったーでシトロさんが電話をつかうときの状況を的確にあらわしてたので引用しますね
「目隠しした状態で、同じく目隠しした相手のところへと突然どこでもドアで乱入。何事もなかったかのごとく自然に会話を成立させる。触れてはいけない、匂いを感じてはいけない…」
どうでしょう。もう平常心で電話をかけられなくなったでしょう?フフフ。て目的と逆の方向をいってしまった。


まとめると、「相手に失礼かもしれない」「相手も私もお互いに見えないのが怖い」「なのに常にアドリブしなければいけない」という不安要素のコンボが、電話恐怖の素になっていると。私の意見はこうなります。



ではどうしたら電話と仲良くできるのか。

・相手が電話に出ているところを想像する

見えないのなら想像してしまえ! 今まで自分が電話をかけるほうの視点でしか書いてませんが、受け取るときも一緒です。相手も自分が感じてる「不愉快さ」や「相手への遠慮」を持ち合わせているかも知れない。見えないことによる不安が大きいのでたまに忘れますが、向こうにいるのは同じ人間だったりします。もしぶっきらぼうに応対されたとしても、それ以上の最悪な事態(焼かれるとか)はないです、たぶん。

・電話の無茶振り具合を前提にして工夫する

電話は交換できる情報がきわめて少なく、かつライブであるため推敲もできず、最初からめんどくさいツールです。もし完璧にすらすらと喋ったとしても、相手がそれをすらすらと受け取れる保証はありません。「相手に伝わるか分かんない」という状況からスタートしているのだ、という認識をしておくことが必要になります。
すると、自然に「どうにかして相手に分かってもらおう!」と思う気持ちが生まれます。それだ!
そもそもコミュニケーションの基本は「相手の気持ちを考える」ということだと思いますけど、電話ではもっと念入りにやってやる。
もし「相手も私と同じくらい電話恐怖心を抱えていて、受話器を持つ手がガタガタ震えているに違いない」
と考えたとき、「じゃあどんな人から電話をもらったら怖くないかな?」と考えます。
ちょっと考えただけでも「日本語が聴き取りやすい」とか「こっちの時間を奪ってるということを理解できている」とか「にこやか」とかすぐでてきたので、それを心がければあら不思議、電話が可愛く見えてきましたね。

ここで私が気をつけたいナーと思うのは「大人の対応を目指さない」ということです。大人であることを示すために電話使ってるんじゃないもん。オペレーターのようなマニュアルを身につけると、確かに大人な感じはします。でも今まで緊張でガタガタ震えていた人がマニュアルをいきなり習得するのは、けっきょく「場数を踏めやゴルァ」といってることと一緒なのだと思います。かっこよく受け答えできますが、それは電話のめんどくささ、不安さを棚に上げるだけで、それで根本的な解決になったらいいけど私はならなかったよ☆

で、電話の不安定さを認識し、相手に配慮しすべきふるまいが見つかると、今までより恐怖心は消えます。私は消えた。だって恐怖は電話というツールがもたらす面もあって、全責任が私にあるわけではないからです。私だけが使えないのではなく、もともと使いにくいものである。だから使いやすいように工夫をこらす。そう考えれば、ガチガチ震えて涙をためるなんてこと、なくなるんじゃないかなあ。

7 件のコメント:

  1. はじめてコメント残します。

    ネットがこんなに普及していなかった時代はもっとおおらかだったな、と。
    言い間違いや言葉のあやも普通にあったし、お互い様だった気がします。
    便利で正確なメールが普及したお陰で、みんなが「失敗しちゃいけない」「悪い意味にとられたらどうしよう(逆もあり。些細なことを大きく受け取ってしまう)」など、ピリピリしてる気がします。
    そう考えると、電話というツールの問題より…許容範囲が狭まっている・嫌われたらどうしよう的な安心感のない人間関係の方が問題なのかな、と。

    忙しいときはそう言っていいし、逆に言われてへこむ必要もないと思うのです。

    生まれたときからメールがあった若い世代だと難しいですかね…

    個人的にはメールより電話の方が声色がある分、会って喋ってるみたいで気が楽です。
    打ち込む時間・労力もお互いいらないし…携帯メールなんかだと返って相手の時間を奪ってるという面もあるかなと思うのです。

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  2. 追記。

    電話がかかってくる、というのは…
    町でばったり知人に会う、というのに似ている気がします。

    忙しいなら挨拶だけで済ませるもよし。
    立ち止まって用件を聞くもよし。
    そのままカフェへ移動、雑談に花咲かせるもよし。

    逆に電話をかけるのも、校内や社内で用件のある人のデスクに歩いていくのと同じこと。


    そう考えると気軽で楽しいツールに…みえてきませんか??

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  3. おはようございます。このブログに移行して初めてのコメントだー!とはしゃいでおります。。

    おっしゃるとおり、メッセージの正確性を重要視する風潮が、逆にコミュニケーションしづらい雰囲気にさせていると思います。
    メールで簡単に正確な情報を伝えられるようになったからこそ、他の伝達手段にも「正確に出来て当たり前」という思いこみをするようになったのだと。それによって「正確に使えてないと人としてやばい」という意識を植え付けてしまうことになった、そういう側面もあるとおもいます。
    そしてそれはビジネスシーンで顕著ですね。「用件を伝え、きく」こと以前に「さようでございますか」がちゃんと言えないから怖い、みたいな。どうでもいいところで悩んでいるような。

    確かに電話は突然かかってくるけれど、労力はメールより遙かに少ないハズなんですよね。私も携帯メールは大嫌いです。「大嫌いの謎解明シリーズ」と銘打って、今度は携帯メールがなぜおっくうなのかを調べたいくらいです(笑)

    でもメールの方が楽(というより、とにかく電話が嫌い)な人が圧倒的に多いのです。緊張して頭が真っ白になってしまうような人達は、窮屈な風潮を抜け出せず辛い思いをしているはずです。
    だから嫌悪感を持ってる人にいきなり「用は慣れだよ」とか「本当は気軽で楽しいものだよ!」といったとしても、「出来るあなたと出来ない私は違うのです」とつっぱねられてしまう可能性がある。
    それは双方に不快感を残すだけで、喧嘩になってしまうおそれもあります。

    それよりは「怖いと思ってOKです、もともとそういうもんです」と捉えたほうが親しみやすくならないかな?と考えたのが今回の記事です。
    手段なんかどうでもいいから、とにかく「今の苦痛をとりのぞく」ことが優先だと思ったのです。

    そうやって今どういう風潮にとらわれているのかを自覚して、腑に落ちやすい対処法を選択していくと、あなたのように電話のあたたかさを実感できるようになるはずです。せっかくツールを使うのだから、楽しみたいですよね。

    長くなってしまいすみませんー!コメントありがとうございました♪

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  4. こちらこそ、長々と気ままに書いてしまったコメントにレスありがとうございます!

    前回は主に知人への電話という視点で書かせていただいたんですが、確かにビジネス上ではまた緊張度がちがいますよね。

    かくいう私も携帯すらない幼少期、友人宅に電話をする際、ご家族への挨拶・取次ぎのお願いなど…ものすごくドキドキしたのを覚えています。
    たぶん、その経験で強制的に慣れさせられた!というのが正直なところですね(苦笑)
    なので「慣れだよ」という方の意見も分かりつつ、連絡手段が多々ある現代では返って壁が高く難しいのでしょうね。
    小さなころ(失敗しても笑って許される年齢)での鍛錬の場がないのはとっても大きいかもしれません。


    そして、電話苦手な方々への処方箋(になるか分かりませんが)…

    実はテレオペの仕事なんかをしている自分ですが。
    「さようでございますか」と言わねばならないところを「そうですか」(NGワード!)などと言ってしまうことも未だにあります(苦笑)
    それでもそのことで相手が不快になった様子は(たぶん)ないですし、むしろ声色で感情が伝わることで助けられている部分が大きい感じです。

    ビジネスメールでは感情を殺した文面ほど素敵ですが、電話は結局人間そのものです。マナーも大事ですが、「お時間大丈夫でしょうか?」「突然のお電話申し訳ありません」という気持ちの方がずっと重要だと思うのです。

    電話が苦手な方はちゃんと相手を気遣ってのことなので、それは伝わるはず。大丈夫ですよ!むしろ相手はきっと好感触に感じていますよ!と電話が苦手な方たちに声をかけたくてコメントさせていただきました。
    またしても長々と失礼致しました(汗)


    携帯メール編、興味深いですね。
    密かにシリーズ化に期待しております。

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  5. 再度コメントありがとうございます。
    なんと、電話のプロフェッショナルだったとは思いもしませんで……!
    そのような方に丁寧に「電話こえーよ」と思ってるひとたちについて考えてくださり、かつアドバイスまでいただけるという体験はなかなか無いと思います。
    この記事を書いて本当に良かった!ラッキーです。

    私もこの記事を書いた後にずいぶんと頭がぐるぐる回っていて、反論がきたらどう対処するのかな、ということを考え続けています。
    「怖いと思う自分を受け入れる」という考え方自体、根性論でたたき上げられた人には「甘えてる」で一蹴されます(笑)。
    そういったたくましい人に怒られると、体がすくんで思うように頭が働かなくなりますね><
    そういうときのために「この反論をふまえたときこの回答ではOKなのか?」を繰り返し問うことは続けていきたいと思います。

    電話苦手はマニュアルを詰め込むだけではなおらないですよね。相手の気持ちを考える、という前提をふまえないと、咄嗟の時にパニックになってしまいます。苦手な人はパニックに柔軟に対処できないと思い込んでるから怖いのでしょう。
    パニックのときにいかに落ち着き柔軟に対処できるか。
    この力は自家製でしか養えない分、正解は自分で探らなきゃいけない。
    電話を超えてどこでも必要な力ですね。電話奥深いな(笑)

    処方箋どうもありがとうございます!優しさに惚れました!
    「そうですか」がNGワードって凄まじいな……

    シリーズ化して新書で出せるように、がんばります!(笑)

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  6. しつこくすみません!(汗

    本日もインバウンド業務(受信業務)を終えてまったり一息ついております、匿名でございます。


    >根性論でたたき上げられた人には「甘えてる」で一蹴されます(笑)。

    そういう方は…実は電話が嫌いだけど頑張りすぎた方なのかもしれませんね。自分ががんばった分、他の方の動向が気になってしまう…、むしろ今でも電話が苦手なのにちょっとがんばりすぎている方なのかも…。
    気にせず電話のお相手に気持ちを向けていればいいかと思います!


    …実はアルゼンチンが気になって、 Kanaさんのブログをお気に入り登録していたところ…
    思いがけず「電話」の話題がUPされていたため、ついつい出てきてしまいました(笑

    これからもブログ楽しみにしていますね!(嫌いシリーズやもろもろ・笑)

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  7. まあ夜おそくまでお仕事なのですね、お疲れ様です~
    インバウンドっていうのですか、メモメモ(え)

    体育会系のアドバイスはいつも怖いのですが(笑)確かに自分が大変だったんだからお前も、という感覚があるのかもしれませんね。
    その連鎖をどうにかとめたいなあと思っていたりします。
    無理強いはやっぱり切ないし。
    いつも温かいお言葉ありがとうございます^^

    え、アルヘン繋がりだったのですかw
    なんという!さすがアルヘンだ、いろんな方がお好きなんですね~!
    すみません、こちらこそメッシファンですがよろしくお願いします(笑)なんだか不思議な感じ。電話仲間みたいな感じになってましたね!

    またお手すきなときにでも、遊びにきてくださいね♪

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